元気な今だからこそ考えたい~相続税申告に備えた「生前相続対策」のすすめ~

「相続」と聞くと、身近な人が亡くなった後、財産を分け合う手続きというイメージが強いかもしれません。しかし、いま専門家の間で最も重要視されているのが、元気なうちに準備を進める「生前相続対策」です。

これは、単に「相続税を安くすること」だけが目的ではありません。残される家族が困らないように、家族への思いやりと愛情を形にする準備なのです。

分かりやすく、この生前相続対策の三つの柱を見ていきましょう。

「生前相続対策」の基本と3つの柱

「相続対策」と聞くと、多くの人が「うちは資産家ではないから関係ない」「まだ元気だから早すぎる」と考えがちです。しかし、家庭裁判所で扱われる遺産分割事件の約8割は、遺産総額が5,000万円以下のご家庭で起きているというデータをご存じでしょうか。

「争族(そうぞく)」と呼ばれる親族間のトラブルを防ぎ、大切な家族に財産をスムーズに引き継ぐためには、元気なうちに行う「生前対策」が不可欠です。今回は、生前相続対策の基本となる3つの柱について解説します。

1. 遺産分割対策(揉めないための対策)

相続で最も悲しいのは、財産を巡って家族の仲が壊れてしまうことです。特に不動産(自宅)など、分けにくい財産がメインの場合、誰が引き継ぐかで揉めるケースが後を絶ちません。 これを防ぐ最強のツールが**「遺言書」**です。「誰に・何を・どれだけ」渡すかを法的効力のある形で残しておくことで、遺された家族の迷いや争いを未然に防ぐことができます。

2. 節税対策(税金を減らす対策)

相続税がかかりそうな場合、財産を減らして税率を下げる工夫が必要です。 代表的なのが**「生前贈与」**です。年間110万円までの贈与が非課税になる「暦年贈与」などを活用し、長い時間をかけて子供や孫へ財産を移転させることで、将来の相続財産を圧縮できます。ただし、贈与の実態が伴っていないと税務署に否認されることもあるため、契約書を作成するなど正しい手順を踏むことが重要です。

3. 納税資金対策(お金を用意する対策)

意外と見落としがちなのが、「税金を払う現金があるか」という点です。相続税は原則として現金一括払いです。「遺産は広い土地と家だけで、預貯金がほとんどない」という場合、相続税を払うために自宅を売却せざるを得ない事態にもなりかねません。 ここで役立つのが「生命保険」です。死亡退職金や生命保険金には「500万円 × 法定相続人の数」という非課税枠があり、受取人がすぐに現金を受け取れるため、納税資金の確保として非常に有効です。

最後に:認知症リスクへの備え

これらの対策すべてに共通する条件、それは「ご本人の判断能力があること」です。 もし認知症などで判断能力が低下してしまうと、遺言書を書くことも、生前贈与契約を結ぶことも、不動産を売却することもできなくなります(資産凍結)。

生前対策は、単なる「お金の計算」ではなく、家族への「思いやり」の形です。時間が味方になる対策も多いため、まずは専門家に相談し、現状の把握から始めてみてはいかがでしょうか。

生前相続対策は、ぜひ柴山淳子税理士事務所にご相談ください。


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