「相続税についてのお尋ね」が届いたらどうする?

突然、税務署から「相続税についてのお尋ね」という書類が届き、戸惑っている方もいるかもしれません。これは、故人(被相続人)の死亡届が提出された後、税務署が故人の財産状況などを把握し、相続税の申告が必要な可能性があると判断した相続人に対して送付するものです。

この書類が届いたからといって、必ずしも相続税の申告が必要というわけではありませんが、無視したり、誤った対応をしたりすると、後々大きな問題になりかねません。ここでは、「お尋ね」への適切な対応方法と、その後の手続きのポイントを解説します。


💡 「相続税についてのお尋ね」とは?

「相続税についてのお尋ね」は、相続人に対し、故人の財産や債務の状況、遺産分割の状況などを任意で回答してもらうための調査票です。申告漏れを防ぐための事前調査としての側面が強い書類です。

税務署は、故人の過去の所得や不動産の登記情報、銀行などの金融機関からの情報提供など、さまざまな情報から「この人には相続税の申告が必要そうだ」と判断しているとされています。


🛠️ 対応ステップと注意すべき3つのポイント

「相続税についてのお尋ね」を受け取ったら、以下のステップで対応を進めましょう。

1. まずは冷静に内容を確認する

書類には、故人の氏名、相続人の情報、主な財産の種類を記入する欄などがあります。まずは、記載されている内容(特に故人の情報)が正しいかを確認しましょう。

2. 財産調査と相続税の有無を確認する

これが最も重要なステップです。「お尋ね」への回答の前提として、まずは相続人全員で協力して故人の正確な財産と債務の状況を把握しなければなりません。

  • 積極財産(プラスの財産)の洗い出し:
    • 預貯金、株式、投資信託などの金融資産
    • 土地、建物などの不動産
    • 生命保険金、退職金(みなし相続財産)
    • 骨董品、貴金属など
  • 消極財産(マイナスの財産)の洗い出し:
    • 借入金、未払金など
    • 葬式費用

全ての財産をリストアップし、相続開始日(死亡日)時点での評価額を算出します。
この評価額の合計が、基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)を超えているかどうかを確認します。

📌 ポイント1:基礎控除額の確認

財産の合計額が基礎控除額以下であれば、相続税の申告は不要です。
この場合、「お尋ね」の回答書にその旨を記載して提出すれば、原則として手続きは終了です。

3. 「お尋ね」に回答し、提出期限までに返送する

「お尋ね」はあくまで任意提出の書類ですが、事実に基づいた正確な情報を記入し、提出期限までに返送することを強くおすすめします。

  • 期限の遵守: 一般的に、回答期限は故人の死亡日から半年〜8ヶ月程度に設定されています。
  • 申告不要の場合: 財産調査の結果、基礎控除額以下で申告が不要な場合は、その旨を明記して返送します。
  • 申告が必要な場合: 財産の合計額が基礎控除額を超える場合は、その回答とは別に、死亡日から10ヶ月以内に相続税の申告と納税が必要です。

📌 ポイント2:回答の正確性

安易に「財産はない」と回答してしまうと、その後の税務調査で申告漏れが発覚した場合に、「意図的に隠した」と見なされ、ペナルティ(加算税や延滞税)が課される可能性もあります。正直かつ正確に記入しましょう。

4. 申告の必要性がある場合は専門家へ相談する

財産調査の結果、申告が必要となる見込みであったり、財産の評価が複雑(非上場株式や不整形な土地など)な場合は、速やかに相続税に詳しい税理士に相談しましょう。

📌 ポイント3:特例の活用と税理士の選定

  • 特例の活用: 小規模宅地等の特例(居住用宅地を大幅に減額できる)など、相続税を大きく減額できる特例制度がありますが、これらを適用するには必ず相続税の申告が必要です。
  • 税理士の活用: 適切な財産評価や特例の適用は専門的な知識が必要です。税理士に依頼することで、適正な申告が可能となり、将来的な税務調査のリスクを減らせます。

🏁 まとめ

「相続税についてのお尋ね」は、税務署からの単なる確認作業です。大切なのは、まずは正確な財産調査を行い、相続税の申告が必要かどうかを冷静に見極めることです。
もし判断に迷ったり、財産評価が難しかったりする場合は早い段階で税理士に相談することが、後悔しない相続税申告への最善の道です。
「相続税申告」や「相続税についてのお尋ね」については、是非、相続に詳しい柴山淳子税理士事務所にご相談ください。


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