これって贈与なの? 知っておきたい「贈与税」の基礎と注意点

「親から生活費の援助を受けた」「子供のマイカー購入資金を代わりに払ってあげた」。
日常の中で行われる金銭のやり取りの中には、「贈与」とみなされ、贈与税の課税対象になるものがあります。特に親子・親族間の金銭移動は、善意によるものであっても税務上の判断が難しいものです。
今回は、贈与税が課税されるケース、非課税になるケースを分かりやすく解説します。


🎁 贈与税がかかる「贈与」とは?

贈与税は、個人から財産をもらったときにかかる税金です。税法上の「贈与」は、当事者間で「あげます」「もらいます」という合意があった場合に成立します。金銭だけでなく、不動産や株式なども対象です。

贈与税には、年間110万円の基礎控除があります。1月1日から12月31日までの1年間で、もらった財産の合計額がこの110万円以下であれば、贈与税はかかりません。


❌ 贈与税の課税対象となる主なケース

たとえ家族・親族間であっても、実質的に財産が移転したと見なされると課税対象となります。

1. マイカー購入資金の援助や将来の住宅購入資金の援助

子供や孫に対し、マイカーや将来の住宅の購入資金としてまとまった金額を無償で渡した場合、基礎控除額(110万円)を超えた部分は贈与とみなされます。

2. 返済について取り決めのない金銭の貸し借り

親子間で金銭の貸し借りをしている場合、それが単なる「貸し借り(借用)」ではなく「贈与」と判断されることがあります。

  • 課税と判断されやすいポイント:
    • 借用書がない: 返済の意思を示す証拠がない
    • 返済の事実がない: 何年も返済が滞っている、または返済していない
    • 返済計画がない: いつ、いくら返すかという取り決めがない

「いずれ返すつもり」という口約束だけでは不十分です。贈与とみなされないためには、借用書を作成し、少額でも定期的に返済を実行し、その記録(通帳の履歴など)を残しておくことが重要です。

3. 名義預金

親が子や孫の名義で勝手に銀行口座を作り、そこに親の資金を入金して積み立てている場合、これは**「名義預金」と呼ばれます。たとえ名義が子や孫であっても、その口座の存在やお金が自分のものだという認識を子や孫が持っておらず、実質的な管理・支配を親が続けていると、そのお金は親の財産**と判断されます。そして、親が亡くなった際に相続税の対象となりますが、生前に「これはあなたにあげたお金だ」と子や孫に渡した時点で、贈与とみなされる可能性があります。


✅ 贈与税が非課税となる主なケース

一方で、法律で非課税と定められているものや、社会通念上「贈与」とみなされないものもあります。

1. 扶養義務者間の生活費・教育費

民法上の扶養義務者(親子、夫婦など)の間で、通常必要と認められる生活費教育費として都度行われる金銭の交付は、非課税となります。例えば、子供の家賃や学費、毎月の仕送りがこれにあたります。

  • 注意点: 非課税となるのは「必要な都度」直接支払われる場合です。将来のための貯蓄や、遊興費に充てるための資金を一度に渡した場合は、生活費や教育費とはみなされず、課税対象になる可能性があります。

2. 一定の要件を満たす教育資金の一括贈与(特例)

**「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」**という特例(2026年3月31日まで)を利用し、金融機関との契約など所定の手続きを踏んだ場合、最大1,500万円までが非課税となります。

3. 一定の要件を満たす住宅取得等資金の贈与(特例)

直系尊属(祖父母や父母)から子や孫に対し、住宅を取得・新築・増改築するための資金を贈与する際、一定の要件のもと最大1,000万円までが非課税になる特例制度があります。(一定の要件あり)


📉 相続税の生前贈与加算(3年延長で7年へ)

生前贈与は、将来の相続財産を減らし相続税対策として活用されることがありますが、注意が必要です。

現行制度では、亡くなる日(相続開始日)から遡って3年以内に、相続人が亡くなった人(被相続人)から受けた贈与は、贈与税の基礎控除(110万円)以下の非課税部分を含めて、相続財産に加算し、相続税が課税されます(生前贈与加算)。

これが、令和6年度の税制改正により、加算対象期間が7年に段階的に延長されることになりました。延長された4年間(4年目から7年目まで)に受けた贈与については、総額100万円までは加算対象から除外されますが、生前贈与を検討する際は、より長期的な視点を持つことが必要になりました。


📝 まとめ

親族間の金銭のやり取りは、税務上の判断を誤ると、後で高額な追徴課税を受けるリスクがあります。「良かれと思って」行った行為が「意図的な財産移動」と見なされることもあります。
贈与税の基礎控除や特例制度を正しく理解し、迷う場合は相続に詳しい柴山淳子税理士事務所にぜひご相談ください。


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