令和8年度(2026年度)の税制改正大綱で、相続税・贈与税における不動産の評価方法が大きく見直される見込みです。
特に、実務に携わる方々やこれから相続対策を検討される方にとって、この改正は資産評価額、ひいては納税額に直結する重要なポイントとなります。
今回の改正の根本にある考え方は、「財産評価基本通達(国税庁の定める評価ルール)に基づく評価額と、市場における実際の取引価格との乖離を是正し、課税の公平性を確保すること」です。
🏠 不動産評価の「乖離」を埋める新ルール
現行の相続税・贈与税における不動産評価額は、原則として財産評価基本通達に基づいて算出されます。
土地は路線価や倍率方式、建物は固定資産税評価額が基礎です。
しかし、特に都心部などの不動産では、通達に基づく評価額が、実際に市場で売買される時価(実勢価格)と大きくかけ離れるケースが散見されていました。この乖離を利用した節税策(タワマン節税など)が問題視され、公平性の観点から見直しが避けられない状況となっていました。
今回の改正案では、この乖離を是正するため、主に以下の2つの視点から評価方法が変更されます。
1. 土地評価の見直し:路線価方式に「市場価格」の要素を反映
現在の土地評価(路線価方式)は、公示価格水準の80%程度を目安として設定されていますが、一部の地域や特殊な土地については、この比率が市場価格と大きくずれることがあります。
改正案では、以下の措置により、評価額がより実勢価格に近い水準になるように調整される見込みです。
- 地域や用途に応じた評価調整: 商業地やマンション用地など、特に市場価格が高いエリアの土地評価について、現在の路線価に加え、市場取引事例や収益還元法による価格も参考に、評価額に反映させる調整が行われる可能性があります。
- 「最大乖離率」の是正: 国税庁は、評価額と市場価格との乖離が著しいと認められるケースについて、個別の是正措置を講じる方向性を示しています。これは、これまで評価通達で低く抑えられていた土地の評価額が一気に引き上げられる可能性を意味します。
2. タワーマンション(タワマン)評価の適正化
タワーマンションの高層階と低層階では、市場での販売価格に大きな差があるにもかかわらず、現行の固定資産税評価額と、それをベースとする相続税・贈与税評価額は、専有面積が同じであればほぼ同額でした。市場では「高層階ほど高価格」ですが、税法上の評価では「階数による差が小さい」という逆転現象が、タワマン節税の温床となっていました。
この問題を解決するため、改正案では、マンションの専有部分の評価額に「階層別効用比」を導入し、階層による価格差を反映させる方向で調整が行われます。
- 階層別効用比の導入: 建物全体の総工費に対する各階層の価格貢献度を算出し、高層階ほど評価額が高くなるような調整率(比率)を乗じる仕組みが検討されています。
- 目安となる評価増: 詳細な計算式は未定ですが、例えば最上階の評価額が、低層階に比べて1.2~1.5倍程度に増加するなど、大きな影響が出ることが予想されます。これにより、高層階を所有している場合の相続税評価額が大幅に上昇することになります。
💡 まとめと今後の対策
今回の改正は、不動産評価の「低さ」を利用した相続対策を困難にするものであり、相続財産に占める不動産の割合が高い方や、タワーマンションを所有している方に最も大きな影響を与えます。
- 改正の核心: 不動産の評価額が、より市場の時価に近い水準に引き上げられます
- 影響: 相続税・贈与税の課税対象額が増加し、結果として納税額が増える可能性があります
この改正は令和8年度(2026年度)の施行が見込まれています。
施行日前の贈与や相続であれば現行の評価方法が適用される可能性が高いですが、法案の内容が固まり次第、早急な対策が必要です。
特に、タワーマンションをお持ちの方や、都心の一等地など市場価格との乖離が大きい不動産をお持ちの方は、税理士などの専門家に相談し、改正後の評価額を試算した上で、遺産分割や贈与計画の見直しを検討することが極めて重要となります。
相続税・贈与税についてより具体的なご相談がある方は、ぜひ柴山淳子税理士事務所にご相談ください。
このコラムは、2026.1.7現在、令和8年度税制改正大綱の情報を基に作成しています。
詳細な評価方法や適用時期については、今後の法令・通達の発表をご確認ください。

