相続が発生した際、遺産分割がスムーズに決まれば良いのですが、現実はそう簡単ではありません。特に不動産をお持ちの場合、「誰がその賃料を受け取るのか」「税金はどうなるのか」という問題が浮上します。
今回は、「相続未分割状態での不動産所得の確定申告」と、申告期限直前に分割が決まった場合の取り扱いについて解説します。
1. 遺産分割が決まっていない時期の「不動産所得」
被相続人(亡くなった方)がアパート経営などをしていた場合、亡くなった翌日から発生する賃料収入は「相続人全員の共有財産」となります。
たとえ遺言がなく、誰が継ぐか話し合いの最中であっても、税務上は「法定相続分に応じて各相続人に帰属する」と考えます。
所得税 確定申告のルール
- 各相続人が申告を行う: 相続人それぞれが、自分の法定相続分に応じた収入と経費を計算し、自身の所得として確定申告を行います。
- 勝手に「代表者一人」にはできない: 「とりあえず長男が全部受け取っているから、長男だけが申告する」ということは認められません。実態に関わらず、法律上の持分で分けるのが原則です。
2. 翌年1/1〜3/15(申告期限前)に分割が決まった場合
ここが今回の重要なポイントです。 所得税の計算期間は「1月1日から12月31日」ですが、その期間の申告書を提出する直前(翌年1、2月や3月頭など)に遺産分割協議が整うケースがあります。
結論:遡って計算し直す必要はない
遺産分割が確定すると、相続開始の時に遡って「最初からその人が所有していた」ことになります。しかし、税務上の不動産所得については、「分割が決まるまでの間に発生した所得は、依然として法定相続分で申告する」が通説的な取り扱いです。
つまり、3月1日に「長男が全て相続する」と決まったとしても、前年分の所得については、相続人全員が法定相続分で申告を行うのが原則的な形となります。
3. なぜ「遡って一人で申告」ではないのか?
民法上はさかのぼって効力が発生することがありますが、所得税は「その時々に誰に所得が帰属していたか」という現況を重視します。
分割が決まるまでは、法的にも全相続人が共有して収益を得る権利を持っていたため、その期間の所得を後から特定の一人に付け替えることは、税務秩序の混乱を招くからです。
分割確定後の所得はどうなる?
- 分割確定日までの所得: 法定相続分で按分して各自申告。
- 分割確定日以降の所得: 不動産を継承した人が100%申告。
このように、1年の中で「按分期間」と「単独期間」が混在することになります。
4. 注意点とアドバイス
準確定申告との違い
亡くなった日までの所得を申告する「準確定申告(死亡から4ヶ月以内)」と、亡くなった翌日からの所得を申告する「通常の確定申告」を混同しないよう注意しましょう。
実際の金銭の動き
「書類上は法定相続分で申告したが、実際のお金は長男が全て持っている」という場合、申告した税額分を長男から支払ってもらうなどの調整が必要です。
遺産分割協議書への記載
トラブルを避けるため、遺産分割協議書には「分割確定までの収益の帰属」についても一筆添えておくと、後々の親族間での精算がスムーズになります。
まとめ
相続未分割の不動産所得は、「とりあえず法定相続分で申告」が原則です。 申告期限直前に分割が決まっても、慌てて一人にまとめる必要はありません。期間を分けて正確に計算することが、税務署からの指摘を防ぐ近道となります。
複雑な按分計算や、大規模な資産がある場合は、お早めに柴山淳子税理士事務所へご相談下さい。
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